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ドラマ「地面師たち」から感じる時代の流れ

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こんばんは、新田です。


最近、よく、

「地面師たち(Netflixドラマ)」

の話をよく聞きますよね。


・・・とは言っても、別に推奨したいわけではなくて、

地上波では放送できないレベルのグロいシーンも多くて、
耐性無い人はツライだろうなと思うので、
そういう人は見ない方がいいですが、

見るかどうかは置いといて、
今日する「解説」の方が重要なので、
それだけでも聞いてもらえたらなと!


つまり、

「今、このドラマが流行っていること」

の意味というか、

ここから感じる “時代のテーマ” なるものを
お話ししていきます。


まず、この物語は、実際にあった

「積水ハウス地面師詐欺事件」

を元にしたストーリーで、

地面師とは

「土地の所有者になりすまして金銭を騙し取る詐欺師」

のことです。


詐欺師が主人公のドラマといえば、

・クロサギ
・コンフィデンスマンJP

などがありますが、これらに出てくるような
「悪を成敗するダークヒーロー」的な感じではなく、

本ドラマの詐欺師(地面師)は、
根っからのワルで、
善良な人を平気で騙します。


特に、詐欺師のボスであるハリソン山中は、
救いようがないくらいの悪です。


だいたい、悪いやつって、

「闇に堕ちたきっかけ(悲しい過去)」

があったりするものですが、
このハリソン山中には、それがありません。


悪として生まれ、悪として生きたのです。


だから、鬼滅の刃でいう「鬼舞辻無惨」的存在。


そんな彼ですが、第1話で、

彼の、土地に対する考え方みたいなのを語るシーンがあって、

そこで、非常に印象的なセリフがありました。


それがこちら。

===========
土地に自我があるとして
土地は土地としてただそこに存在していただけです。

本来は誰のものでもないはずなのに、
人間の頭の中だけで「所有」という概念が生み出され
それによって、戦争や殺戮を繰り返してきた。

人類の歴史は早い話、「土地の奪い合いの歴史」です。

だとしたら、土地自身は、
人間を滅ぼしたいという本能が
あるのかもしれませんね。
===========

僕は、これが、
このドラマにおいて一番伝えたかったmessageなのではないか

と感じました。


実は、これと全く同じ考えの作品があるんです。


さて、なんでしょう・・・!?


はい、答えは、

「すずめの戸締り」

です。


すずめの戸締りでは、

そもそも、土地というのは、
誰のものでもなく、
しいて言うならば神様のものである

という話がありました。


その神様のことを「産土(うぶすな)さん」と言います。


本来、誰のものでもないその土地を、

まるで「自分のもの」であるかのように「所有」です。


そこに「歪み(ゆがみ)」が生まれます。


この「歪み」は、集合的無意識にたまっていき、

これが大きくなっていくと、

「大地震」となって現れるのです。


「すずめの戸締り」では、
「大地震」が起こる前に、
「ミミズ」が現れます。


「ミミズ」とは、

「未見ず(いまだみず)」

であり、

人々が、大事なものを見ずに、

「この土地は自分のものだ!」

と思い込むその「歪み」によって作られます。


ある意味、この物語におけるハリソン山中とは、

人々の「歪み」が蓄積したことによって生まれた

ミミズ的な存在であり、

時代が作り上げたバケモノ的存在なのです。


実際、彼(ハリソン山中)からは、

人間が持つ「欲望」なるものを
あまり感じないのです。

お金がほしい!と思ってやっているわけではない。

使命感なるものがあるわけでもないし、

生に執着しているわけでもない。


「寄生獣」に出てくる「寄生生物」が、
本能的に人間を殺戮しているのと同じ感覚で、

まるで、大自然が、人間の歪みを糺すために

作り上げたかのような、そんな不思議な存在です。


ちなみに、この “歪み” って、
別に「土地」だけに言える話ではありません。



例えば、金融市場においてもそう。


本来、「お金を使わずに貯め込む」というのは、
自然の摂理に反した行為です。


お金は、「循環している状態」が正しい状態。


そうではない状態に留めようとするから、
“歪み” が生じます。


そうして “歪み” が蓄積した結果、起こるのが、

「株価の大暴落(バブルの崩壊)」

です。


最近、日本でも凄まじい大暴落がありましたよね。


あるいは、「南海トラフ」がしきりに騒がれてたり・・・


総じて言えることは、

「今、”歪み” が非常に大きくなっている」

ということ。


1人1人が、その “歪み” を無くしていかないと、

この「地面師たち」に出てくるようなバケモノが生まれるよ

という警告のようにも感じます。


そして、このドラマで詐欺に使われた場所が、
「お寺」なんです。


そのお寺を、ある企業が、買い取って、
そこに商業施設を作ろうと計画するのです。


彼らは、

「ここに大きな施設を作って、映画館やショッピングモールを入れたら、
 みんなの生活が便利になるに違いない!」

と嬉しそうに未来を語ります。


一見、「みんなのため」にやっているようで、

そのプロジェクトを進めている本人は、

ホテルの最上階で女を抱きながら地上を見下ろしつつ、

「もうすぐ、あの場所に、俺が作る大きなビルができるんだ・・・!」

と野心に燃えます。


「みんなのため」と言いつつ、
自分のこと、金のことばかり考えている。


そこには、神仏に対する敬いも畏れもない。


さらに、そのお寺の住職さんも、
ホスト狂いで、
念仏唱えながらホストのことで頭がいっぱいだったりと、
まともにお寺を守っていませんでした。


そんな人たちだから、地面師に狙われたのです。

(別に、地面師たちは、悪を成敗しようとか
 そんな使命感は一切ありませんけど。)


このドラマ自体は、
何の救いもない(誰も幸せにならない)話だし、

後味も決して良くはないんですけど、

今日話したような視点で見たら、
非常に深い作品に感じると思います。


ちなみに、同じくこの「地面師たち」と
同じ監督が作った「エルピス」というドラマもあるのですが、
こっちも非常に素晴らしい作品です。(セミナーでも解説しています。)


この監督は、世の中の闇を描くのが本当に上手ですね。


それでは、また!!