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TENET解説&レビュー〜人生のアルゴリズム〜

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こんばんは、新田です。

「鬼滅の刃」の人気、凄まじいですね・・・!!

本当に、映画業界の希望の星であり、
コロナで落ち込んだ経済を回復させるための
起爆剤になる映画だなぁと感じます。


ところで、鬼滅の刃が圧倒的すぎて、霞んでしまっていますが、
最近、もう1つ映画を観ました。


それが、

「TENET」

という映画です。


この映画を是非解説して欲しい!!って要望が結構きていたので、
今回は解説していこうかなと思います。


まず、この映画、ハッキリ言って、

「非常にムズイ(というか、ややこしい)」

です。
(というか、過去最高に難解かも・・・)


僕も、一切の前情報無しで観に行ってしまったので、
特に前半部分は、正直さっぱり分かりませんでした。


途中からようやく意味が分かってきたのですが、
それでも、ややこし過ぎて、頭がついて行かなかったです(笑)


これ初見で完璧に理解できる人いたら天才だと思います。
(というか、監督も、分からせる気無いんじゃないかと思う。)


なので、今日は、あえてネタバレありで
この映画を解説したいなと思いますが、
絶対、ネタバレ先に読んでから観た方が、楽しめると思います。


では、いきます!(以下、ネタバレあり)


まず、この映画は、

「時間に関する新たな挑戦」

をしてるんですね。


もともと、この監督は
「時空を超える」
というテーマのものが好きで、

例えば前回の映画(インターステラー)は、
「重力子(グラビトン)」を使って、過去にメッセージを送る、
ということをやりました。


「時空を超える」というテーマは、他にも、
・バックトゥザフューチャー
・君の名は。
・Stand by me ドラえもん
など、これまで僕も色々解説してきましたが、

いずれの映画も、

「タイムスリップ」

なんですね。


つまり、

現在から1年前に、時空を超えてワープする、

みたいな感じです。


だけど、この映画が画期的なのは、
「タイムスリップ」
ではない、という点です。


そうではなく、
「時間の逆走」
というのをやります。


つまり、

過去から未来

に向かって時間が流れている人と、

未来から過去

に向かって時間が流れている人が
同時に存在するのです。


それを可能にするのが、
未来で開発された「時間逆転装置」です。


なんとなく、古事記の「天の岩戸隠れ」に出てくる「岩戸」に似てるので、
以下、「岩戸」と書きます。


Aさんが岩戸に入ると、
時間が逆転したA’さんが出てくるのです。


逆転した状態(A’の人)だと、

前に向かって歩いていると後ろから風を受け、

ピストルの弾は壁から銃口に向かって発射され、

炎は自分の熱を奪い冷たくして、

という感じで、全て「時間が逆転する」のです。


AとA’は、
「粒子(+)」と「反粒子(−)」の関係になります。


反粒子って何??

って思われるかもしれませんが、
プラスとマイナスが逆転したもの、
と考えてください。


実は、粒子って、
何も無い空間から、出たり消えたりするのです。


例えば、こんなイメージ。

目の前の空間には、何も無いのに、
突然「りんご」が1個出現します。

だけど、これだとつじつまが合いません。

だって、0が1になっているからです。


じゃあ、どうするか???

−1のりんごを、同時に出現させたら良いのです。


つまり、こんな感じ。



0=(+1)+(−1)

みたいなイメージで、

「りんご(+)」と「りんご(−)」を
“同時に”出現させるのです。


これらは反対の関係なので、
2つをくっつけようとすると、
打ち消し合って、消えてしまいます。


つまり、2つのりんごがくっついて、
「0」に戻るのです。


・・・という感じで、
今話したことって、日常では起こらないのですが、

「ミクロな世界」

においては、しょっちゅう起こっているのです。


何も無い空間から、
粒子(A)と反粒子(A’)が同時に出現し、
そして、2つがくっついて、消える・・・

みたいな現象です。


ちなみに、
何も無いところ(ゼロ)から、
粒子(A)と反粒子(A’)が同時に出現する現象を、
「対生成」と呼びます。



0=(+1)+(−1)

みたいな感じです。


逆に、粒子と反粒子がぶつかると、消えてしまいます。


これは、

(+1)+(−1)=0

という感じで、
これを「対消滅」と言います。


例えば、エヴァンゲリオンに「ポジトロンライフル」というのが出てきますが、
あれは、電子(−)にとっての反粒子であるポジトロン(+)をぶつけることで
相手を消滅させてしまうビームを撃つ兵器です。


ここまでが、前提知識の1つ目。


で、さっきの時間反転装置(岩戸)の話に戻りますが、

Aさんが、岩戸に入ると、
反粒子(反物質)であるA’さんが出てきます。


AとA’は、イメージとしては

「時間軸における鏡の世界」

です。


鏡の世界においては、
光は、空間を反射して、逆方向に戻っていきます。

だけど、まるで鏡の中の世界に真っ直ぐに進んでいるかのように見えます。



これと同じで、
「岩戸」は、時間軸における「鏡」であり、
そこに入ると、時間を逆走するようになるのです。

だけど、Aさん本人は、
プラス方向にずっと進んでいるように感じるのですが、
鏡の中の世界なので、全てのものが、時間を逆行して進んでいくわけです。



例えば、鏡に入る前に、何かが燃えていて「熱いなぁ」と感じたら、

鏡に入った後は、炎がだんだん小さくなっていき、
(熱が奪われるので)「冷たいなぁ」と感じます。


鏡に入る前に、爆発が起きて煙が上がっていたら、

鏡に入った後は、煙が一点に収束して消えていきます。



ところで、Aさんは、岩戸に入った後は、
逆行するA’さんとして進んでいくわけですが、

その世界には、
順行して進む自分自身(A)もいます。


なので、もし、逆行世界において、
A’さんが、順行する自分自身(A)とぶつかると、
対消滅を起こして、消えてしまうのです。



こういう「反粒子」のような概念を導入しているので、
物語をややこしくしています。
(というか、物理的には結構強引な設定なので、
「物理っぽく説明してるだけ」って思っておいた方がいいかも・・・。)


多分この映画、この監督の他の作品に比べたら、
そこまでヒットしないと思います。

この作品が難しく感じる理由が、

「設定が斬新すぎるから」

なのです。


「タイムトラベル」系の作品の方が、
「ワンパターン」なので、理解しやすいのです。


例えば、君の名は。だったら、

タイムトラベル + 入れ替わり

という分かりやすい構造だし、


インターステラーだったら、

タイムトラベル + 物理学(大統一理論)

という、これも1つの新しい挑戦ではあったのですが、
物語(ストーリー)の構成はいたってシンプルで、
「よくあるパターン」
なのです。


人って、一度見たことがあるものを
形を変えて見たら「面白い!」って思います。


「君の名は。」だって、
未来で隕石が落ちるってことを知って、
過去にタイムスリップ(=入れ替わり)をして
未来(運命)を変える、という話で、
・入れ替わり
・前世
・恋愛
・隕石衝突
・ムスビ
などの、「ヒットしやすい色んな要素」を導入しつつも、
大枠のストーリーはよくあるパターンです。


それに対して、この映画(TENET)は、
本当に、時間に関する全く新しい概念を導入してます。


タイムトラベルは、あくまで時間軸を「瞬間移動(ワープ)する」のに対して、
TENETでは、「逆走する」という、かつてない概念を導入しているのです。


しかも、それに対する説明を全然してくれないので、
非常に難しく感じてしまうのです。



では、この時間の逆行に関しての概念をもう少し解説すると、

例えば、新幹線が、

福岡ーーー京都ーーー東京

と通っていますが、
時間というのは、空間と違って1方向にしか流れません。


つまり、普通は、

福岡→→→京都→→→東京

としか行けず、逆向きに進むことはできないのです。


だけど、今回の装置(岩戸)を使うとどうなるか?


例えば、福岡から、いったん東京まで行ってから、
岩戸に入って(鏡の世界に入って)、時間を逆走する、と考えてみます。



先ほどお伝えした通り、鏡の中の世界に入ったら、
本人(A)は、そのまま時間軸上を進んでいるように感じますが、
実際には、時間を逆走して進むことになります(A’)。



では次に、

福岡→→東京、と行った後、
いったん、東京で岩戸に入って逆走して、
その後、京都でまた岩戸に入って、時間の向きをもとに戻して東京に行く、
という動きを考えてみます。


すると、こんな動きになります。



ここで、もう一度、「時間軸」について考えてみてほしいのですが、
本来、時間軸を戻ることはできません。

つまり、1つの時間に、同じ人間が2人以上存在することはありません。

だけど、上の場合、
これを「1つの時間軸」で見たら、

京都から東京の間には、
同じ人間が、同じ時間に「3人」同時に存在することになります。
(そのうち、2人は順進、もう1人は逆行です。)


福岡から京都までは1人なのに、
京都から東京は3人になって、
東京でまた1人に戻る・・・。


これを、通常の時間軸のみで観測するとどんな風に見えるか?というと、

福岡から京都に行く間は、通常通り、1人なのですが、

京都の時間になった瞬間に、

突然、岩戸から、AとA’が”同時に”出てくることになります。


つまり、「誰もいなかった空間」から、新たに2人が出てくるのです。


これが、先ほど話した、「対生成」の関係です。

0=(+1)+(−1)

ならぬ、

0=A + A’

なわけです。


逆に、東京の時点では、岩戸に2人が同時に入って、
消えることになります。


これが、

(+1)+(−1)=0

であり、「対消滅」なわけです。


つまり、こんな感じ。



ある時間において、
2人の同じ人間(AとA’)が、何もないところ(岩戸)から同時に出てきて、
片方は普通の動きを、もう片方は時間が反転した動きをします。

そして、しばらく時間が経ったら、2人の同じ人間(AとA’)が岩戸に入り、
そこでぶつかって消滅するのです。

(なので東京に着いた時に、また1人に戻るのです。)


こんな風に、

「何も無いところから、同時にプラスとマイナスが出現したり、消えたりする」

という、日常の感覚からしたらあり得ない現象が、

「時間の逆走」

という概念によって、日常の世界に存在させているわけです。


この感覚が難しかったら、
例えば、雪山で、足跡を残しながら歩いていて、
途中で一旦戻って(逆走して)、また進む、
という動きをしたと考えてみてください。


足跡は、こんな感じになっていますが、
これって、まるで、最初1人だったのに「途中で3人に分かれた!」かのようにも見えます。
(そして、3人のうち1人だけ、後ろ向きで歩いているのです。)

金田一とかコナンで、よくこの原理を使って人数を増やしたり見せるトリックが昔ありましたよね。


「空間」においては、行ったり来たりするのは当たり前なのですが、
それが「時間軸」においても同じことができるようになった、
というだけの話です。


でも、この映画の難しいところは、それだけではありません。

この「岩戸」を使って、
色んなキャラが時間を行ったり来たりするもんだから
だんだん、今どの時間で、どっち向きに進んでるのかが
わけ分かんなくなって混乱してくるのです(笑)



ところで、色んなキャラクターが出てきて、ごちゃごちゃしてる映画を
正しく理解するコツとして、

「それぞれのキャラクターが、どんな目的で動いているのか?」

を理解することが重要になります。


とは言っても、それも、この映画は非常に難解なのですが、
簡単に言ったら、

時間順進の人間(現代人) vs 時間逆行の人間(未来人)

の「戦争」である、と考えると良いかなと思います。


未来人の目的は、

「アルゴリズムという装置を完成させ、起動させること」

です。


「アルゴリズム」とは何なのか?というと、

「時間の流れの基準を、反転させる装置」

です。


どういうことか?というと、

僕らにとっては「過去から未来」への時間が、
通常の時間軸になります。


すると、未来から過去に向かって進む人(A’)は、
酸素ボンベを付けないと生きていけません。

なぜなら、「呼吸をする」ということは、
酸素を吸って、ヘモグロビンと結合させないといけないわけですが、
鏡の中の世界(反粒子)だと、結合してくれないから、呼吸ができないのです。


なので、酸素ボンベを一緒に持って行って、反物質化させて、
それを吸わなければいけないのです。


しかし、アルゴリズムを起動させると、これが逆転して、

「未来から過去」

に時間が流れている人(A’)は普通に生きれるようになり、

「過去から未来」

に時間が流れていた人(A)は、酸素ボンベが無いと、
突然呼吸が出来なくなって、死んでしまうのです。




(これに関しては、もはや原理が全く分からないので
「ドラえもんの世界の道具」くらいに思うようにしてます。)


未来において、地球は、資源がなくなり、崩壊しようとしていました。


例えば「インターステラー」では、

「じゃあ、地球を捨てて他の惑星に住もう!」

となったのですが、

今回の作品(TENET)では、

「じゃあ、時間を逆転させて、未来から過去に流れる時間で生きよう!」

となったわけです。

よくこんな発想出てくるな、って感じですが。。笑


この話を聞いた時、個人的には、

「あれ、でもそうなったら、植物とか動物も呼吸できないから
食べ物なくなるんじゃないいの・・・?」

とか、色々納得できない部分もありました。
(巨大な岩戸を作って、大量の動物とか植物も一緒に逆行させる
ノアの箱船みたいなものを作るのでしょうか??)


まぁでも細かいツッコミは無しにして・・・



つまり、この映画は、
「アルゴリズム(時間軸の方向を変える装置)」
を巡っての争いであり、

「時間の主導権」
をかけた戦いであり、

「現代人(順進人間)vs 未来人(逆行人間)」

の戦いなのです。


ただし、本当に未来人と戦うわけでありません。

アルゴリズムは、どの時間において完成させても、
過去、現在、未来の全ての時間において
流れが逆転します。


だから、未来人は、現代人に情報を送って、
その人にアルゴリズムの完成を託したのです。
(これが今回の映画の「ラスボス」にあたるわけです。)


しかも、その人は、もう末期の病気で、

「どうせ死ぬから、世界も一緒に滅ぼしてやれ」

っていう感じで死のうとするのです。


なので、正確には、

現代人 vs 未来人の意志のもと動く現代人

の「代理戦」となるわけです。

(だから、それぞれの目的とか立ち位置が、非常に分かりづらいのです!!)



とりあえず、この設定を覚えておくだけで
だいぶ理解しやすくはなる筈です・・・!笑

(後はもう雰囲気だけ楽しんだらいいんじゃないかなぁと。。)


こういう説明を最初にしてくれたらいいんですが、
実際の映画では、散々混乱させられて、ようやく説明されるから、
前提知識なしで行ったら途中までは観てて正直辛かったです(笑


さて、設定(前置き)はこのくらいにして、

この映画は、ストーリーの階層構造としては、

「カメラを止めるな」

と似ているな、と感じます。


最初、よく分からないままスタートするのですが、
だんだん、

「世界に対する違和感」

が生まれてきます。


あれ、なんかこの人、動きが変だな・・・みたいな。


でも、よく分からないまま物語が進むのですが、
途中で種明かしが入るのです。


つまり、

「あぁ、そうか、なんでこんな変な動きをしてるのかというと、
時間を逆走して動いてたからなんだ!!」

と。


岩戸に入って(御隠れになって)、再び出た時(岩戸開きをした時)、

「世界は逆転していた」

のです。


それから、この「アルゴリズム」という装置は、
今までの映画にない、新しい感覚を提供してくれています。


基本的に、「時間」の流れがあると、
「因果」というものが生まれます。


「原因」と「結果」の関係ですね。


例えば、バックトゥザフューチャーで、
過去で現代のものを何か落としたら、
そこから先の未来は変わっていきます。


だけど、それよりも過去は、変わりません。


あくまで、変わるのは1方向なのです。


例えば、「今」が変われば、
「未来」は変わります。


だけど、「過去」は変わらないように見えます。


しかし、TENETにおける「アルゴリズム」は違うのです。


どの時間において起動させても、

過去、現在、未来

が”同時に”変わるのです。


これを、人生に置き換えるなら、
人生にも「アルゴリズム」があります。


僕らは通常、過去から未来、という時間の感覚を持っていますが、
「アルゴリズム」を起動させた瞬間に、
時間の流れが逆転するのです。


すると、未来からの時間の流れに切り替わるので、まず、

「自分の未来は、こうなる!」

というのがスタートとなります。


ゴール設定が変わることで、
自分の未来が書き換わりました。


でも、

「その未来に行くための人生だった(そういうシナリオだった)」

と考えたら、

過去でやったこと、そして現在やっていること全ては、
未来でその目標を達成するために
「わざと」やっていたことになります。


過去の時点では、

「あの時は本当辛い過去だったな」(マイナス)

と思っていたのに、

「あれは、このためにわざとやっていたんだ」(プラス)

という意識が、生成されるのです。



そうすれば、過去、現在、未来の全てが
同時に変わったことになるのです。


これが、僕らにとっての、

「アルゴリズムを起動させる」

という感覚なのだと思います。


つまり、

「過去からの時間で生きていた人」

が、アルゴリズムが起動されることで、

「未来からの時間で生きる」

ようになるのです。


これを、TENETでは、

「本当に」時間を逆行させて、
その現象に対して物理的にそれっぽい理屈をつけた、

というのが面白い点です。


この監督(ノーラン)は、
僕らが持っている感覚に、

「もし、これを物理で表現したら・・・?」

ということに挑戦しているのです。


だけどあまりに斬新すぎて、
ついていくのが大変です。


えてして、パイオニアというものは、
あまり評価されないものです。

それよりも、二番煎じ+αの方が、ウケるのです。


だから、こんなワケわからんものを作るより、
もはや鉄板となっている「タイムトラベル+運命を変える」の
ストーリーを使った方が、絶対世間にはウケるのです。


だけど、それでもあえて、
誰も理解できなかったとしても
新たな世界観に挑戦し、新領域を開拓しようと試みるノーランは
素晴らしい監督だな、と感じますね。


それでは、今日はこの辺で。

ありがとうございました!!



PS.
ちょっと、説明を分かりやすくするため、
(+僕自身がまだ1回観ただけで、完璧に理解しきれてないため)
あえて厳密に説明していないのと、
もしかしたら僕が取り違えている部分があるかもしれません。
それはご容赦ください!
(というか、インターステラーとかと違って、
物理的な部分はこの映画結構雑な感じになってるので、
ざっくりな理解で良いんじゃ無いかと思います。)


PS2.
次回より、メルマガで新シリーズはじめます。

今回出てきた「岩戸」ですが、
この「天の岩戸開き」のイベントが、
年末にまた行われます!!

「岩戸に入ると、世界が逆転する」

とはどういうことか?!

そちらは、今、鋭意企画中ですので
ぜひお楽しみに!!