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ツンデレ大和田常務と闇から光の物語

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こんばんは、新田です。

半沢直樹2、面白かったですね・・・!!

以前、

「半沢直樹はなぜ出向させられたのか?」

という予想を書いたことがありましたが、
概ね予想通りでした。


ただ、今日はあえて、全く真逆の説、

「半沢直樹は大和田常務を土下座させて良かった説」

を提唱してみようと思います。


さて、その前に・・・

今回、半沢直樹が再び大ヒットした背景に、

「大和田常務が仲間になる」

という超展開を見せたことが
大きかったのではないか、と言われてますよね。

しかも、原作には大和田常務は出てこないんで、
ドラマオリジナルの展開です。


まぁ〜、前回、土下座だけで視聴率40%超えを取っちゃったわけですから、
出さないのは勿体無い!!と思ったのでしょう。


とは言っても、また敵として出してもワンパターンなので、
今度は「味方」として出演させたわけです。


すると、あのムカつく顔が可愛く思えてくるばかりか、
最後は敵に対して憎ったらしい態度を取ってくれて
それが逆に爽快感すら生みます。

大和田が一気に「超絶頼もしい味方」になったのです。


そう考えたときに、
今回の半沢直樹2のストーリーは、
池井戸潤さんの原作に加えて、

「大和田常務が仲間になっていくストーリー」

が組み合わさっていることになります。


そして、後者のストーリーは、僕がよく言っている、

「敵が仲間になるストーリーの型(パターン)」

に当てはまってますよね。


初めて聞く方のために復習しますが、
「敵が仲間になるストーリー」
には、
「型(パターン)」
があるのです。


お決まりの流れ、というやつです。


本当はセミナーとかで聞いて欲しいんですけど、
まぁ簡単に大きな流れを説明しますと、こんな感じ。


<<敵を仲間にするストーリー>>

圧倒的に強大な敵を作る
    ↓
”罰”を与えていったん落とす(カルマの解消)
    ↓
主人公となんらかの「共通の目標」or「共通の敵」を作る
    ↓
“一時的に”共闘する
    ↓
ツンデレ要素を入れる
    ↓
主人公が仲間として受け入れる


これは、ドラゴンボールでも、ワンピースでも、
よくやっている手法なのです。


この「敵」は、最初、めちゃめちゃ強くて、
そしてめちゃめちゃ悪いやつに描かれます。

当然、そのまま仲間になることはできません。


なぜなら、読者からしたら

「こんな悪いやつと仲間になるなんて・・・!!」

という心理が働くからです。


だからどうするか?というと、

「いったん敵が、コテンパンにやられる(罰を受ける)」

のです。


それによって、

「カルマの清算(罪を償わせる)」

ことになるのです。


これは、前回の、

「半沢直樹はなぜ出向させられたのか?」

でも同じ話をしました。


個人的な恨みによって、
大和田常務を全員の前で土下座させたことで、
半沢直樹は「負」を背負ってしまいました。

つまり、もしあの状態で大和田を左遷して
半沢を昇格させていたら、
大和田と親しい人たちから半沢は恨まれるばかりか、

「この会社ではこういう下克上をやって良いんだ」

という風に他の社員に認識されてしまいます。


だから、頭取は、半沢の罪を清算(カルマを解消)するために、
「出向」という少し理不尽な形を取りました。

そして、出向先で結果を出してから、
改めて本店に戻したのです。


一方で、大和田は、皆の前で土下座をするという、
最大級の屈辱を受けることで、
「カルマの清算」
が行われました。


つまり、視聴者(=神視点)からしても、

「もうこれ以上罰する必要はないだろう」

と無意識で思うようになるのです。


なので、半沢直樹2がはじまった段階で、
大和田が仲間になる初期条件はすでに整っていたのです。


でも、大和田も半沢も、お互いのことが嫌いなので、
この状態ではまだ仲間になるなんてあり得ません。


そこでどうするか?というと、

「共通の目標」or「共通の敵」

を作る、ということをするのです。


今回でいうと、より強大な敵を作ることで、
共闘しなければ勝てない状況を作ったのです。


それによって、

「お互い嫌だけど、”一時的に”仲間になる」

ということをさせるのです。


この”一時的に”というのがポイントです。


その目標が達成したら終わり!

だって嫌いだから!!


・・・ってことを何度も念押ししながら、
仲間になるのです。


これだと、視聴者も納得するのです。

一時的ならしょうがない、と。

むしろ頼もしいし、
嫌がりながらもお互い協力する様子が
滑稽で見てて微笑ましいのです。


でも、そうやって一緒に同じ目標を達成しようと頑張っているうちに、
だんだん「仲間意識」が生まれてくるものです。

それは、半沢の中でも、視聴者の中でも、です。


そして、視聴者の中で、だんだん、こんな集合意識が生まれるのです。


「大和田よ、頼むから、半沢を裏切らないでくれ・・・!!」


大和田は、性格も良いとは言えないし、
半沢のことは大嫌いだから、
いつ裏切ってもおかしくありません。

・・・し、実際に、裏切った?かのようにも見えました。

もし「カイジ」の世界だったら絶対裏切ってた筈です。


でも、大和田は裏切っていなかったばかりか、
最後は、半沢のために、わざと「悪役」を演じて、
半沢を救ってくれたのです。


大和田は、

「お前なんか大嫌いだ!!!!」

って言いながら、
めちゃめちゃ愛のあることをやってくれたのです。


まさに「ツンデレ」。


その時、視聴者の中で、

「大和田が最後まで味方でいてくれて良かった・・・!!!」

という安心感と、

「半沢を助けてくれてありがとう!!!」

という感謝と、

「大和田、かっこいい・・・!!」

という思いと、様々な感情が混じる中、
最後、半沢の辞表を破り、放り投げ、

「アバヨー!!」

と言って出て行く様子は、
まるで(辞表が)紙吹雪が吹いているかのようになり、
最高に輝いて大和田は退場したのです。


最大の敵だった大和田が、
最高の味方になった瞬間です。


その姿を見て、半沢直樹も、最後にふっと笑います。

大和田を、仲間として受け入れ、彼に感謝したのです。


つまり、このドラマは、
原作の池井戸潤さんの小説のストーリーに、
全く別のストーリー「敵が仲間になるストーリー(パターン)」を
くっつけたものなのです。
(しかも、もはや後者の方が圧倒的なインパクトを残してます。)


なので、これはもうドラマの脚本家さんが素晴らしかったとしか
言いようがありません。


っていうか、ドラマの脚本家って、本当に損な仕事だなぁと思います。


失敗したら、

「原作は良かったのに、クソみたいな脚本家作りやがって!!」

と言われるのに、
成功しても、原作者が褒められるだけで、
脚本家の名前なんて誰も知りません。

(脚本家の丑尾健太郎さんって名前、ほとんどの人が知らないでしょうね・・。)


まぁ、それはいいとして・・・

冒頭で話した、

「半沢直樹は、大和田を土下座させたことが功を奏した」

という説。


これはつまり、土下座をさせることで、
大和田のカルマ清算になった、ということなのです。

だから、大和田は味方になることができたわけです。


だって、もしそれがなかったとして、
同じ状況だったら、

「なんであんな悪いことしたやつが、何の罰も受けずにいられるんだ!!」

「こんなやつ仲間にして欲しくない!!」

って絶対思います。


それは視聴者もそうだし、半沢も思うでしょう。

だから、素直に仲間として受け入れられないのです。


なので、

「土下座させた」

ことが、半沢直樹2も踏まえて見たら、
実はプラスに働いていた、ということです。


もちろん、これは「結果論」ではあります。

なので半沢のやったこと(土下座させたこと)は、
良いこととは言えませんし、
「半沢直樹1」では、それを何度も繰り返したのです。

もう自分の目的は達成されて、
これ以上無駄に恨みを買う必要なんて無いのに、
個人的な感情で、最後の最後で相手に強い恨みを抱かせる終わり方をしている。


そういう生き方をしている人は、
いつも良いところで、最後の最後に足を引っ張られたり、
後ろから刺されたりするものです。


でも頭取は、

「半沢に、いつか頭取になってほしい」

と思っていました。

だから、彼に、生き方を見直してもらうために、
わざと出向させたのです。


そういう生き方をしていると、
いつか足元救われるぞ、と。


頂点に上っていくプロセスでは、それでいいかもしれない。


だけど、頂点になろうとしている、
つまり「王」になるのであれば、それではいけない。


頭取は半沢に、帝王学を教えたかったのです。

それを、説教することなく「出向させる」という形で、
身を持って体験させたのです。



ところで、僕は、ストーリーライティングで、

「自分の人生を最高の(そして最上の)ストーリーにしよう!」

ということを言っていますが、
その際、重要になってくるのが、

「自分の中の敵が味方になる」

ということです。


だって、自分の人生でも、

「あの時の過去は本当に自分にとって闇の時期だった」

って時期、絶対あるはずです。


これって、自分の人生の足を引っ張る、
いわば「敵」ですよね。


でも、ストーリーライティングを勉強しているうちに、

「そうか、あの時のおかげで、今、〜〜があるんだ・・・!」

と思えるようになる筈です。


これは、マイナスだった過去が、プラスに変わる(闇から光へと変わる)瞬間です。


そして、強力なマイナスだったものがプラスになった時、
とてつもなく頼もしい味方となるのです。(ベジータの法則!)


半沢直樹が大和田を土下座させたことも、
あの時はマイナスだったでしょう。

半沢が得られたのは満足感だけ。

失ったのは、それ以外の全て。

大和田に恨みを買われ、
せっかく功績をあげたのに出向させられ、
散々な目にあいました。

きっと当時の半沢は、悔しかったと思います。


でも、後から見たら、それがプラスだった。

だって、あの経験があったおかげで、
頭取と2人で話す機会も得て、頭取に諭され、
生き方を変えようと思えた筈だからです。


そして、そんな半沢に対して、
大和田は最後の最後で、男を見せました。


頭取は言いました。

「大和田には過去を託し、
半沢には未来を託した。」


まさに、過去、現在、未来が全て繋がり、
全てのマイナスがプラスになり、闇が光になって、

その光を背に、大和田常務は、
紙吹雪の中、カッコ良く去っていったのです。


この時、半沢の、

「父親を自殺に追い込まれた」

というネガティブな感情は、
完全に成仏したのです。


この物語は、

・半沢直樹
・大和田常務

の2人の成長物語であり、
相入れない異なる価値観が融合する物語なのです。


こんな視点で、もう一度、半沢直樹の最終回を、
ぜひ観て欲しいなと思います!!

それでは、ありがとうございました!